2018.12.05 06:46「天羽衣(あまのはごろも)」その3 石川雅望 さてそれから3年ばかり経って、三保の長者はどうやら少し病気を煩った様であったが、きっと運命であったのだろう、しばらくして体は弱りに弱って、終に亡くなってしまった。 白良は言うまでも無く、母親の嘆きは並大抵のものではなかった。 しかしどうしようもなく、法式の通りに葬送のことを行って、むなしい煙を天へ送った。さて白良は、父と生き別れてからというもの、家に引きこもってばかり暮らしていたが、いつか夢のように月日は過ぎて7年ばかりを過ごした。母は白良が学問だけに熱心であり、ひたすら家に閉じこもっているので、 「病気にでもなってしまうだろう。」と心配して、 「時々は浜辺に出て、心を慰めて休みなさい。」と言い、天気ののどかな日に、無理に外へ出してやった。 白良は今...