「大石相い戦う」 伽婢子 浅井了意


寛文六年(江戸1661年)の刊行。全六十八話の怪談集



 越州春日山の城というのは、長尾謙信(ながうけんしん)の居住なされていたところである。

 謙信が最早死去なされるという日の前の話であるが、城のうちに大きな石が二つある。ある日の暮れにかの二つの石が、躍り上がり躍り上がり何度も動いたので、人々は皆奇妙に思っていた。するとたちまちに一箇所に転がり寄って、どんとぶつかり合い、また立ち退いては躍り上がり、再び打ち合う。これは大きな石のことである。なぜこのようなことが起こるとも知りがたい。

 ただただ奇怪なことに思ったが、人はみなどう取り計らうすべもない。夜過ぎる頃まで戦って、その石が欠け砕けて散り飛ぶことは霰がふるようである。ついに二つの石は、もろともに砕けてやがて戦いを止めた。

 夜が明けてから石の周りを見れば、其の辺りに血が流れている。これはただ事ではないと思って不審に思っている所に、謙信が病気となりついにお亡くなりなされて、謙信の息子兄弟はその後継を争って、本城と二の曲輪とで、互いの陣にわかれて軍をする。恐らくはその前兆であったのであろうと、後で思い合わせたという。


 

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