「軍隊内務書 綱領」 その1(軍令陸第十七号)

明治41年12月15日発行 正価金15銭


綱領


1、兵営は苦難を共にし生死を同じくする軍人の家庭にして、その起居の間において軍記に慣れ熟さしめて、軍人精神を鍛錬させる事をもって主要なる目的とする。

 軍人はよくその精神を鍛錬す。ゆえに心身を君国にささげて、任務の存する所には水火さえも辞せず。義を重んじて節を尊び、恥を知り名を惜しんで、死生の間に落ち着く。この精神はわが国民が代々磨いてきたところの精粋であって、国運の隆盛・後退、戦争の勝敗、ひとつにその残存につながるものとする。

 これをもって上官は演習・勤務等の際にはもちろん、起き臥し及び寝食の際においても細心の注意をとり、部下をもってその鍛錬に余念がないようさせなければならない。まさしく精神教育は、ただ精神をもって教育するを得るべし。そしてその教育の任務にあたるものを将校とする。すなわち将校は、軍人精神の源にして一国の元気の枢軸である。その教育と感化とにより、国軍の精神を最高度に発し上げることが必要である。

 軍紀は軍隊成立の大本である。故に軍隊は、必ず常に軍記を振りなすことを要する。将校と下士卒とを問わず、時と所を論ずることなく、上官の命令に服従して法規を堅く守り、熱誠をもって軍務に努力する、これを軍記を振りなす実証とする。

 そして服従は軍記を維持する主要なる道である。上官と部下との間において、絶対的にこれを励まし行い、習慣がついにその性をなすに至らしめる事を要する。その他軍人一般にてはその階級及び新旧の順序に従い、服従の道を守り、恭しき謙譲と従順とをもって全軍の秩序を整然とさせざるべからず。

 まさしく服従は、下級者の忠実なる義務心と崇高なる徳義の心から、軍記の必要を覚り知った観念に基づいて、上官の正当なる命令と余すところない監督及びその感化の力により、よくその目的を達し、心中から出て形体に現れ、遂に弾丸の雨が飛ぶ間にあっても甘んじて身命を上官へゆだね、意思一つその指揮に従うに至るものとする。

 外形のみの服従はこの際何等の価値なきことを心に留め、正心誠実にこれを行わせることについては、一瞬の間もおこたることあるべからず。そしてその最良の方法は、上官がまず自らその法規を遵守し礼儀を正して服従の道を守り、その模範を自ら表すにあることであるを忘るべからず。



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